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男も日焼け止めを塗る時代になったのはなぜ?メンズ美容が「身だしなみ」になった理由

男も日焼け止めを塗る時代になったのはなぜ?メンズ美容が「身だしなみ」になった理由

男性が日焼け止めを塗るのは、もう珍しいことではありません。ただし「男性の8割がUV対策」という数字をそのまま日本人男性全体へ当てはめるのは危険です。最新調査から、メンズUVが美容品から身だしなみ・実用品へ変わった背景を読み解きます。

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少し前まで、男性の日焼け対策といえば「海に行く日だけ」「ゴルフのときだけ」というイメージが強かった。ところが今は、ドラッグストアへ行けば男性向けの日焼け止めが普通に並び、化粧品ブランドも「皮脂」「テカリ」「毛穴」「清潔感」といった言葉で男性へUVケアを提案している。

では、本当に「男も日焼け止めを毎日塗る時代」になったのだろうか。

結論から言えば、男性の日焼け止め利用は確実に広がっているが、全男性の日常習慣になったとまでは言えない。2025〜2026年の調査には「男性の8割がUV対策」という数字がある一方、別調査では30〜50代男性のUV対策実施率が27.3%にとどまる。数字だけを見ると、同じ日本の話とは思えないほど差が大きい。

この違いこそ、今のメンズ美容を理解する入口になる。男性の美意識が突然一斉に高まったのではない。日焼け止めが「美容に熱心な人が使う化粧品」から、通勤、スポーツ、外仕事、肌荒れ、加齢対策をまとめて扱う実用品へ近づいた。その結果、これまで美容売り場に縁がなかった男性まで市場へ入ってきた、と考えた方が実態に近い。

男の日焼け止めは本当に「普通」になったのか

まず注意したいのは、「男性の日焼け止め使用率」という便利そうな数字には、統一された定義がないことだ。

調査主な数字実際に示しているもの
BULK HOMME・2025年調査80.0%25〜44歳男性401人の「何らかのUV対策」実施率。日焼け止めだけではない
OBRIGADO関連・2025年調査27.3%30〜59歳男性1,209人のUV対策実施率
ホットペッパービューティーアカデミー・2025年26.2%15〜69歳男性の「過去1年の日焼け止め購入率」。使用率ではない

「8割」と「約3割」は矛盾しているように見えるが、対象年齢、質問文、調査時期、分母が違う。BULK HOMMEの80.0%は25〜44歳に限ったメーカー調査で、「帽子や日傘などを含む何らかのUV対策」を聞いている。さらにUV対策実施者の87.2%が日焼け止めを使うという結果も、全男性ではなくUV対策をしている321人が分母だ。

したがって、「日本人男性の8割が日焼け止めを塗っている」と書くのは正確ではない。現在を表すなら、日焼け止めを塗る男性は珍しくなくなったが、まだ全員の生活習慣ではない、くらいが妥当だ。

「男が日焼け止めなんて恥ずかしい」が最大の壁ではなくなった

男性の日焼け止め普及を考えるとき、昔ながらの「男が化粧品を使うことへの抵抗」がまず思い浮かぶ。しかし最新調査では、壁の中心が少し違う場所へ移っている。

BULK HOMMEの25〜44歳男性調査では、日焼け止めを使わない、あるいは使用頻度が低い理由として「面倒」が38.0%、「ベタつく」が37.2%。一方、「男性が使うことへの抵抗」は7.4%だった。

つまり今のメーカーが戦っている相手は「男らしさ」だけではない。朝に一工程増えること、手が汚れること、顔がテカること、白浮きすること、汗で不快になること。こうした日常の小さな面倒の方が、利用を止める要因になっている。

だから最近の男性向けUVには、スティック、ジェル、さらさら仕上げ、透明、石けんで落とせる、洗顔後1本、といった言葉が増えた。「美容の良さを理解してください」と説得するより、「面倒じゃないですよ」と設計する方が効く市場になっている。

男性用と一般用の日焼け止めが本当に違うのかは、別記事の「メンズ用の日焼け止めは何が違う?『MEN』と黒いパッケージの正体」で詳しく比較している。

海より「通勤」で日焼け止めを使う男性がいる

もう一つ象徴的なのが使用場面だ。BULK HOMME調査では、日焼け止め利用場面として「通勤・通学」41.1%が、「海・プールなどのレジャー」32.5%を上回った。

これはかなり大きな変化である。

海へ行く日はイベントだが、通勤は生活だ。日焼け止めが「夏のレジャー用品」であるうちは、市場は夏休みと週末に偏る。しかし駅まで歩く、営業で外を回る、自転車で通うという場面へ入れば、日焼け止めは歯磨きや整髪料に近い日用品になっていく。

もちろん、25〜44歳男性401人という限定された調査だけで日本全体を語ることはできない。ただ、メーカー側が「海」「スポーツ」だけでなく「通勤」「肌印象」「テカリ」へ広告を広げている動きとも整合する。

男性が日焼け止めを使う理由は「美白」だけではない

男性向けUVが広がった理由を「男も美白したくなったから」と説明すると、かなりの部分を取りこぼす。

調査では、赤みやヒリつきの回避、シミ・そばかす、肌荒れ、過去の日焼けの痛み、年齢による肌変化などが挙がる。スポーツや外仕事では、そもそも美容以前に「焼けると痛い」「肌が荒れる」「翌日の仕事がつらい」という実用上の問題がある。

30〜50代男性を対象にした2025年調査では、UV対策開始のきっかけとして「シミ・そばかすが気になった」23.4%、「過去の日焼けで痛い思いをした」19.4%、「年齢による肌変化」16.1%が挙がった。

20代の「自分磨き」と、40代の「最近シミが増えた」は、同じスキンケアでも入口が違う。だからメンズ美容をZ世代だけの流行で説明するのは難しい。

50代・60代は「若者と同じ美容」をしているわけではない

ホットペッパービューティーアカデミーの2025年調査では、「男性も美容に気を使うのが当たり前」と考える割合は50代34.7%、60代30.8%だった。一方で実際に美容を実践している割合は50代9.2%、60代7.5%にとどまる。

ここに、中高年男性の美容の特徴が見える。

「美容をする男はおかしい」と拒絶する人ばかりではない。しかし自分自身が美容液、メイク、脱毛を一通り行うわけでもない。乾燥したから保湿する。シミが気になるからUVを使う。ひげ剃り後につっぱるからオールインワンを使う。必要な部分だけを取り入れる人が多いと考えた方が自然だ。

インテージの購買パネルでも、60〜70代男性の基礎化粧品購入額は2019年から2024年にかけて約1.5倍に増えている。利用率が若者並みになったわけではないが、支出は確実に存在する。

SNSやK-POPがメンズ美容ブームを作った、は少し言いすぎ

若い男性の美容といえばTikTok、YouTube、韓国コスメ、K-POPを連想しやすい。影響はある。しかし市場全体のスタート地点として見ると、数字は意外に地味だ。

インテージ調査では、男性が基礎化粧品を使い始めた理由のトップは「乾燥・肌トラブルを改善したい」31.2%。「自分磨き」24.1%、「加齢で気になるようになった」19.4%、「友人・家族の影響」17.1%が続く。SNS・インフルエンサー、韓国アイドルはそれぞれ3.5%だった。

ただし、美容を始めた後の「何を買うか」ではSNSの存在感が大きくなる。若年のスキンケア利用者ではTikTok、YouTube、Instagram、Xが商品情報源になる一方、50代では店頭の比重が高い。

つまりSNSは、男性全体を美容に目覚めさせた巨大スイッチというより、美容市場へ入った人が次の商品を選ぶナビとして強い、と考える方がデータに合う。この広がりは「男はなぜ化粧水・BBクリーム・脱毛まで始めた?」で詳しく掘り下げている。

日焼け止めはメンズ美容の「最初の商品」なのか

日焼け止めは面白い商品だ。美容に関心がなくても、ゴルフ、ランニング、外仕事、通勤、日焼けの痛みから使い始められる。したがって一部の男性にとっては、スキンケアへの入口になり得る。

しかし「男は日焼け止めから化粧水へ進み、そこから美容液、BB、脱毛へ進む」という一本道を裏付ける全国的な縦断購買データは、今回の調査では確認できなかった。

むしろ2025年の男性購入率は洗顔料49.3%、化粧水32.1%、乳液・クリーム26.5%、日焼け止め26.2%。購入率だけ見れば、洗顔の方がはるかに広い。

だから日焼け止めを「男性美容の第一入口」と断定するより、美容に興味が薄い男性にも届きやすい、少し異質な入口と位置づける方が面白い。

そして「男性専用品」は逆に減るかもしれない

ここがメンズ美容市場の少しややこしいところだ。

インテージは2024年の男性化粧品市場を497億円、2019年比1.8倍と推計している。男性が化粧品へお金を使う市場は拡大している。

一方、富士経済の2026年調査では、男性専用のシャンプーやボディケアなどからユニセックス商品へ移る動きがあり、メンズコスメティックス7品目の市場は前年比0.4%減の1,616億円と見込まれている。

これは矛盾ではない。

最初は黒い容器に「MEN」と書いてある方が、「これは自分が買っていいものだ」と分かりやすい。ところが一度スキンケアに慣れると、「自分は脂性肌だからこれ」「無香料がいい」「こっちの方が安い」と、性別ではなく機能で選べるようになる。

男性美容人口は増える。でも「男性専用」と書かれた商品だけが増え続けるとは限らない。

この逆転現象は、メンズ美容が一過性のブームではなく、むしろ普通の消費行動へ溶け込み始めた兆候とも読める。

男の日焼け止めは「美容男子のもの」ではなくなりつつある

男性が日焼け止めを使うようになった理由は一つではない。紫外線への知識、酷暑、スポーツ、外仕事、シミ、肌荒れ、加齢、商品改良、社会的な抵抗の低下が同時に進んだ。

その結果、日焼け止めは「美しくなりたい男性の化粧品」だけではなく、「焼けて痛くなりたくない」「テカりたくない」「外回りで肌を荒らしたくない」という身だしなみと実用の道具になった。

ただし、必要性は人によって違う。紫外線そのものと男性の肌の関係、SPF・PAの選び方については「男に日焼け止めは本当に必要?塗らないとどうなる?」で整理している。

そして「身だしなみ」という言葉が便利になりすぎると、今度は「日焼け止めを塗らない男は自己管理不足」といった別の圧力も生まれる。この問題は「男の『清潔感』はどこまで必要?」で考えたい。

参考資料

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