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男はなぜ化粧水・BBクリーム・脱毛まで始めた?メンズ美容市場が広がった理由

男はなぜ化粧水・BBクリーム・脱毛まで始めた?メンズ美容市場が広がった理由

男性美容の入口は日焼け止めだけではありません。2025年の購入率では洗顔や化粧水が日焼け止めを上回ります。男性が複数の美容カテゴリーへ広がった理由を、時短・補正・加齢・SNSの役割から読み解きます。

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男性美容の話になると、「最近は男も日焼け止めを塗るようになって、そのまま化粧水やメイクへ進んだ」というストーリーが作りやすい。

しかし実際の購買データは、もう少し複雑だ。

2025年のホットペッパービューティーアカデミー調査では、男性の過去1年の商品購入率は洗顔料49.3%、化粧水32.1%、乳液・クリーム26.5%、日焼け止め26.2%だった。つまり購入率だけで見ると、日焼け止めより洗顔や化粧水の方が広い

男性美容には一つの入口があるのではない。ニキビ、乾燥、ひげ剃り、日焼け、青ひげ、老け見え、毎朝の時短。違う悩みから入って、必要なカテゴリーへ枝分かれしている。

男性美容は本当に伸びている?

インテージの全国15〜79歳53,600人の購買パネルによると、2024年の男性化粧品市場は497億円。2019年比1.8倍へ拡大した。男性基礎化粧品だけでも438億円とされている。

ただし、ここで「日本のメンズ美容市場は497億円」とだけ書くと誤解する。

富士経済は男性専用のヘア、シェービング、洗顔、整肌、ボディなど7品目を広く集計し、2026年のメンズコスメティックス市場を1,616億円と見込んでいる。矢野経済研究所にも別の市場定義がある。

数字が違うのは、調査会社が間違っているからではない。「男性が買った化粧品」なのか、「男性用と定義された商品」なのか。ヘアケアまで含むのか。メーカー出荷額なのか小売購買なのか。分母が違う。

大切なのは、どの定義でも男性が美容・身だしなみへお金を使う領域が無視できない規模になったことだ。

男性美容の入口は日焼け止めだけではない

2025年調査の男性購入率を並べると、今の男性美容の地図が見えやすい。

  1. 洗顔料 49.3%
  2. 化粧水 32.1%
  3. 乳液・クリーム 26.5%
  4. 日焼け止め 26.2%
  5. アフターシェーブ 17.7%
  6. クレンジング 16.2%
  7. 美容液 14.3%
  8. パック 12.7%

日焼け止めは、美容に興味が薄くてもスポーツや通勤、日焼けの痛みから始められるため、特殊な入口になり得る。しかし全国的に「日焼け止めを買った男性が次に化粧水へ移った」という縦断購買データは今回確認できなかった。

したがって、男性の日焼け止め普及は美容市場拡大の一部ではあるが、全男性が同じ階段を登っているわけではない。

化粧水を使う理由は「モテたい」より肌トラブル

インテージ調査では、男性が基礎化粧品を使い始めた理由の1位は「乾燥・肌トラブルを改善したい」31.2%だった。「自分磨き」24.1%、「加齢で気になるようになった」19.4%、「友人や家族の影響」17.1%が続く。

美容という言葉から想像するほど、入口は華やかではない。

風呂上がりに顔がつっぱる。冬になると粉を吹く。ひげ剃り後に赤くなる。30代後半からシミやハリが気になってきた。こうした日常の不快感が購買理由になる。

だから中高年向け商品では「美肌」より「乾燥」「ハリ」「シワ」「1本で済む」といった訴求が強くなる。

なぜ男にはオールインワンが強いのか

富士経済は2025年のメンズ整肌料市場を326億円と見込み、手軽なオールインワンが市場をけん引すると分析している。

オールインワンの強さを「男はズボラだから」で終わらせると本質を外す。

スキンケア初心者にとって難しいのは、塗ることより選ぶことだ。

化粧水と乳液は何が違うのか。美容液は必要か。朝と夜は変えるのか。どれを先に塗るのか。何千商品もある中から正解を探す方が面倒である。

2025年のスキンケア男性調査でも、価格と並んで「何を選べばよいか分からない」が大きな障壁だった。オールインワンは時間だけでなく、選択肢と順番そのものを減らす商品なのである。

BBクリームは「化粧」なのか「補修」なのか

2025年の男性メイクアイテム購入率は全体13.8%、20代では34.8%まで上がる。商品別では化粧下地9.7%、ファンデーション9.1%、コンシーラー9.0%、フェイスパウダー8.8%、アイブロウ8.2%だった。

ここでも一枚岩ではない。

SHISEIDO MENのBBは、クマ、シミ、毛穴、赤み、ニキビ跡、青ひげなどを自然にカバーする商品として説明されている。これはアイシャドウやチークで色を楽しむメイクというより、「顔色を普通に見せたい」「疲れて見られたくない」という補正に近い。

一方、20代では色を楽しむメイク用品の購入も増えている。男性メイクを全部「身だしなみ」と呼ぶのも、全部「自己表現」と呼ぶのも違う。

補正としてのメイクと、表現としてのメイクが同時に広がっている。

眉毛は「化粧」と「散髪」の間にある

眉は少し特殊だ。

2025年調査では、眉・まつ毛など顔まわりの毛にお金や時間を使いたい男性は全体21.4%、20代35.4%。男性のアイブロウ購入率は8.2%だった。

眉は色を塗らなくても、剃る、切る、形を整えるだけで変わる。そのため、ファンデーションより髪型やひげ剃りに近い感覚で受け入れられる可能性がある。

ただし、「眉はメイクより男性に受け入れられやすい」と全国規模で直接比較した調査は確認できていない。ここは市場の印象を事実のように書かない方がいい。

男性脱毛は伸びている。でも脱毛サロン市場は縮んでいる

ここも一見矛盾する。

ホットペッパービューティーアカデミーの2025年調査では、過去1年の脱毛サロン利用率は男性5.6%、女性5.2%となり、調査開始以来初めて男性が女性を上回った。

20代男性では脱毛サロン12.5%、医療脱毛14.5%。美容医療全体でも20代男性の利用率は22.8%という数字が出ている。

一方、脱毛サロン市場そのものは前年比で大きく縮小した。大手サロンの倒産、美容医療への移行、セルフ脱毛など、選択肢が分散しているからだ。

つまり「サロン市場が縮小した=男が脱毛しなくなった」ではない。

男性脱毛は見た目だけでなく、毎朝のひげ剃り時間、剃刀負け、青ひげといった実用的な悩みとも結びつく。美容と時短の境界にあるサービスだ。

ただし、体毛があること自体を「不潔」とみなす医学的根拠は今回の公的・医学資料では確認できなかった。ここは「男の『清潔感』はどこまで必要?」につながる重要な論点だ。

SNSは男を美容に「目覚めさせた」のか

SNSの役割は、開始理由と商品選びを分けると見えやすい。

男性全体では、基礎化粧品を始めた理由としてSNS・インフルエンサーは3.5%。乾燥・肌トラブル31.2%や家族・友人17.1%よりかなり低い。

しかし現在スキンケアをする若年男性の商品情報源ではTikTok、YouTube、Instagram、Xが強い。

要するにSNSは、ゼロから美容を始めさせるというより、始めた人に「次はこれを買う」と教える装置として存在感がある。

K-POPが日本のメンズ美容を作った?

韓国アイドルを基礎化粧品開始のきっかけに挙げた男性は、インテージ調査で全体3.5%、20代8.9%だった。

20代では無視できないが、市場全体の原因と呼ぶには小さい。

K-POPや韓国美容の大きな役割は、「男性が肌を整える」「眉を描く」「ベースメイクをする」姿を日常的に見せたことだろう。男性の美容表現を可視化し、心理的なハードルを下げた一要素と考えるのが妥当だ。

男性美容は「全員が始めた」のではなく、使う人が深くなった

2025年の男性基礎化粧品購入率は62.7%で、大きく跳ね上がったわけではない。

それでも市場規模は伸びる。

理由の一つは、すでに使っている男性が洗顔だけでなく、化粧水、乳液、美容液、クレンジング、パックなど複数カテゴリーへ広がり、一人当たりの購入額も増えていることだ。

つまり「昨日まで何もしなかった男が全員美容男子になった」のではない。

利用者の裾野がゆっくり広がりながら、使う人はより多くの商品を使うようになった。

そして男性が化粧品に慣れるほど、「MEN」と書かれた専用品だけに縛られずユニセックス商品へ移る。メンズ美容の成熟は、逆に「メンズ専用品」というカテゴリーを薄くする可能性すらある。

参考資料

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