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メンズ用の日焼け止めは何が違う?「MEN」と黒いパッケージの正体

メンズ用の日焼け止めは何が違う?「MEN」と黒いパッケージの正体

黒い容器に「MEN」と書いてある日焼け止め。その中身は女性用と別物なのでしょうか。主要商品の仕様と消費者調査を比べると、機能差より「選びやすくする設計」が見えてきます。

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ドラッグストアの日焼け止め売り場で、男性向け商品だけ妙に雰囲気が違うことがある。

黒、紺、グレー。太い英字。「MEN」「FOR MEN」。そして「皮脂」「テカリ」「さらさら」「爽快」といった言葉。

ところが箱の裏を見るとSPF50+、PA++++。隣にある一般向けの日焼け止めもSPF50+、PA++++。

では、メンズ用の日焼け止めは本当に中身が違うのだろうか。

結論は、「一部は合理的な違いがある。ただし、UV防御の基本機能の多くは男性専用ではない」だ。

SPF50+やPA++++は「メンズ専用技術」ではない

まず一番分かりやすいところから切り分けたい。

SPF、PA、ウォータープルーフ、透明スティック、ジェル、石けん落ち、皮脂吸着、さらさら感。これらは男性向け商品だけに存在する技術ではない。

商品主な特徴「男性専用」の度合い
SHISEIDO MEN クリアスティック UVプロテクターSPF50+・PA++++、透明スティック、汗・皮脂、耐水性機能自体は一般品にもある。男性肌・皮脂訴求が強い
ORBIS Mr. ドライタッチUVジェルSPF50+・PA++++、皮脂吸着、さらさら、無香料テカリ・ベタつきへの訴求が男性向け
SHISEIDO MEN BBクマ、毛穴、赤み、ニキビ跡、青ひげ補正青ひげや男性肌色の補正は男性向けの意味が比較的大きい
一般向けアネッサ・スキンアクア等SPF50+・PA++++、耐水、ジェル、さらさら、石けん落ち等主要UV機能は男性向けと重なる

実際、一般向けの商品にもSPF50+、PA++++、耐水性、皮脂対応、透明タイプは普通にある。高いUV防御力だけを理由に「男性はメンズ用を買うべき」とは言えない。

では男性向けの「合理的な違い」はどこにある?

男性と女性の皮膚には平均的な差がある。男性は皮脂量や皮膚厚が高い傾向があり、毎日のひげ剃りによる刺激も男性市場では大きな要素だ。

そのため、男性向け商品で意味を持ちやすいのは、たとえば次のような設計である。

  • 皮脂が多い人向けのテカリ・ベタつき対策
  • ひげや短い毛に絡みにくい剤型
  • ひげ剃り後を想定した使用感
  • 青ひげを自然に補正するBBの色設計
  • 手を汚さず短時間で使えるスティックやオールインワン

ただし、「男性は全員脂性肌」という意味ではない。乾燥肌の男性もいるし、皮脂が多い女性もいる。性別の平均値より、個人の肌質差の方が大きいケースもある。

したがって、敏感肌や乾燥肌なら、メンズ用という文字より自分の肌に合う処方を優先した方がいい。

「MEN」と書くだけで、本当に買いやすくなる?

ここからが面白い。

2025年にネオマーケティングが、現在スキンケアをしている18歳以上の男性400人へ行った調査では、商品に「男性用」と表記されることで「購入したくなる」と回答した人が53.1%だった。

男性用表記を好む人に理由を聞くと、「自分の肌向けに設計されていそう」が57.5%、「男性特有の悩みに特化して信頼できそう」が47.2%だった。

ここで重要なのは、「男性用」と書くことで本当に男性の肌へ医学的に最適化されるわけではないということだ。

「男性用」という二文字には、性能表示とは別の仕事がある。

売り場で一瞬で自分向けと分かる。女性向けコスメを買っているような心理的抵抗が減る。何十種類もある中から候補を絞れる。「これなら自分が使ってもおかしくない」と判断しやすい。

つまりMEN表記は、成分ではなく選択のナビゲーションとして機能している可能性がある。

ただし、この53.1%は日本人男性全体ではない。対象はすでにスキンケアをしている男性400人だ。「日本人男性の半分がMEN表記を求めている」と一般化してはいけない。

なぜメンズコスメは黒・青・グレーが多いのか

メンズ売り場を眺めると、黒、紺、青、グレー、銀、金属的なデザインが多い。これは化粧品だけでなく、シェービング、制汗剤、ヘアワックスにも共通する。

パッケージ研究では、色、形、文字、材質によって「男性向け」「女性向け」というカテゴリー認識が作られることが指摘されている。黒や濃い青、直線的な形状、太い書体などは、長年の商品設計や広告によって男性的な記号として学習されてきた。

ただし、「黒を見ると男性の購買意欲が本能的に上がる」といった単純な話ではない。

日本のメンズコスメで、黒い容器にしただけで購入率が何ポイント上がるのかを直接示す信頼できる公開データは、今回の調査では確認できなかった。

そして実際のメンズブランドも全部黒ではない。アネッサは金のブランド資産を生かし、マニフィークは緑、VARONは茶や金系を使う。対象年代やブランドイメージによって変わる。

昔のメンズUVは「スポーツ」、今は「清潔感」も売っている

男性向け日焼け止めの広告を時系列で見ると、商品の役割が広がってきたことが分かる。

2010年代前半から中盤の男性UVでは、スポーツ、アウトドア、汗、水、爽快感といった言葉が目立った。2016年には40代男性へシミやハリを訴求するUV化粧水が登場し、2019年のGATSBYでは日焼け、ひげ剃り、汗・皮脂対策を1本にまとめながら「清潔感」「好印象」へ接続している。

2020年代に入ると、さらに毛穴、乾燥、テカリ、青ひげ、肌印象へ広がり、2026年の男性向けUVでは化粧水・乳液機能まで一体化した商品も出ている。

スポーツ用品が消えたわけではない。その上に、通勤と毎日の身だしなみが乗ってきたのだ。

この変化そのものは「男も日焼け止めを塗る時代になったのはなぜ?」でも詳しく扱っている。

「男は男性用を買うべき」は、むしろ古くなるかもしれない

男性向け化粧品市場には、ちょっとした逆説が起きている。

インテージによれば男性が購入する化粧品市場は2024年に497億円となり、2019年比1.8倍へ伸びた。

ところが富士経済は2026年、男性専用のメンズコスメティックス市場について、ユニセックス商品への移行などを背景に前年比0.4%減を見込んでいる。

男性が美容をしなくなったのではない。

男性が美容に慣れた結果、「男性用」と書かれた棚だけから選ばなくなった可能性がある。

最初は黒い容器にMENと書くことが、コスメ市場への入場券として働く。しかし使い慣れると、成分、値段、使用感、香り、肌質で選ぶ。そこで性別ラベルの役割が薄くなる。

MEN表記は男性を市場へ連れてくる。しかし市場へ慣れた男性は、MEN表記から卒業するかもしれない。

この流れは、男性美容の広がりを考えるとかなり象徴的だ。

メンズ用を選ぶべき人、一般用でもいい人

青ひげを自然に補正したい、テカリを強く抑えたい、ひげ周辺に塗りやすいものが欲しい、メンズブランドの香りやデザインが好き。こうした人には男性向け商品を選ぶ合理性がある。

一方、単純に紫外線を防ぎたい、敏感肌用がいい、無香料がいい、大容量がいい、価格を抑えたいという場合は、男女兼用まで候補を広げた方が選びやすい。

性別は一つのフィルターであって、正解ではない。

日焼け止めの必要性やSPF・PAについて先に知りたい場合は「男に日焼け止めは本当に必要?」を参照してほしい。さらに化粧水、BB、脱毛まで男性美容が広がった理由はこちらの記事で検証している。

参考資料

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