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暑すぎて夏休みに旅行できない?猛暑で変わり始めた日本人の「旅行シーズン」

暑すぎて夏休みに旅行できない?猛暑で変わり始めた日本人の「旅行シーズン」

猛暑で「夏休み=旅行」の常識が変わり始めています。2026年の旅行データや気象データをもとに、夏旅行は本当に秋へ移っているのか、避暑地へのシフトや「9月も暑い」問題まで検証します。

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夏休みといえば旅行。

以前、友人と夏の長崎へ旅行したことがあります。せっかく長崎まで来たんだから、街を歩いて、名物を食べて、あちこち観光するつもりでした。

ところが、暑い。とにかく暑い。ちょっと外を歩いただけで、体力がごっそり持っていかれます。

「もうホテルでよくない?」

結局、観光らしい観光はほぼせず、冷房の効いたホテルに籠ることに。外へ出たのは、ラーメンを食べに行ったときくらいです。長崎まで来て、ホテルとラーメン。何しに来たんだ、俺たち。

旅行自体は楽しかった。でも、「これ、もう少し涼しい季節なら、もっと長崎を満喫できたよな」とは正直思いました。

夏休みといえば旅行——そんな当たり前も、そろそろ限界なのかもしれません。ここ数年の日本の夏は、旅行を楽しむには、ちょっと暑すぎます。

子どもの頃から当たり前のように存在してきた組み合わせですが、2026年の日本では、その当たり前が少し怪しくなってきました。

理由は単純です。

暑すぎるのです。

せっかく京都へ行っても、昼間の寺社巡りがしんどい。東京へ遊びに行っても、駅から目的地まで歩くだけで汗だく。テーマパークなら待ち時間の暑さまで考えなければなりません。

「だったら、夏休みに旅行するのをやめて、9月や10月にずらせばいいのでは?」

実際、海外では猛暑を避けて旅行時期を秋へずらす動きが注目され、日本でも2026年のシルバーウィーク予約が大きく伸びています。

ところが、旅行会社の予約データや消費者調査を追ってみると、話はそこまで単純ではありませんでした。

日本人が一斉に「夏旅行から秋旅行へ」移動しているわけではありません。

むしろ起きているのは、旅行時期をずらす人、北海道や高原へ逃げる人、昼間を避けて朝や夜に観光する人、屋内施設を中心に回る人への「分散」です。

そしてもう一つ厄介なのが、9月になったからといって、必ずしも涼しくないこと。

猛暑時代の日本では、「いつ旅行するのがいいのか」そのものを考え直す時期に来ているのかもしれません。

2026年の夏は「旅行するには暑すぎる」のか

まず確認しておきたいのが、2026年の暑さです。

「昔だって夏は暑かった」という話はよく聞きます。しかし、長期的な気象データを見ると、日本の暑さは同じ場所にとどまっているわけではありません。

気象庁によると、日本の年平均気温は長期的に100年あたり1.44℃の割合で上昇しています。特に1990年代以降は高温となる年が目立つようになりました。

2024年の年平均気温は統計開始以来1位、2023年が2位、2025年が3位でした。

さらに2026年7月も、西日本を中心に顕著な高温となりました。気象庁は、西日本の7月下旬の平均気温が平年より2.5℃高く、1946年の統計開始以降、7月下旬として最も高かったとしています。

つまり、「夏は昔から暑い」のは事実でも、旅行者が直面する暑さの頻度や長さまで昔と同じとは言えません。

最高気温だけでなく、猛暑日や夜になっても気温が下がりにくい日が続けば、朝から夕方まで歩き回る観光との相性は当然悪くなります。

これまで夏の暑さ対策といえば、飲み物や帽子、日傘程度で済ませる人も多かったはずです。しかし現在では、屋外で長時間活動する人向けにファン付きウェアまで一般化しています。

「服そのものにファンを付ける」という発想が珍しくなくなった背景については、当サイトの空調服とは?仕組み・効果・選び方を初心者向けに解説した記事でも詳しく紹介しています。

それほどまでに、日本の夏は「暑さに耐えて普通に行動する」だけでは済みにくくなっています。

実際、2026年の夏休み旅行は減っている

では、暑さによって夏旅行そのものが減っているのでしょうか。

JTBが2026年7月に発表した夏休み旅行動向によると、7月15日から8月31日までに1泊以上の旅行へ出かける日本人は、国内・海外を合わせて7,117万人と推計されています。

項目2026年見込み前年比
総旅行者数7,117万人95.4%
国内旅行者6,900万人95.6%
海外旅行者217万人91.2%
国内旅行1人あたり費用4万8,500円103.2%
海外旅行1人あたり費用32万3,000円106.3%

面白いのは、旅行する人数は減っているのに、一人あたりの旅行費用は増えていることです。

国内旅行者は前年より約4.4%減る一方、1人あたりの予定費用は3.2%増えています。

ただし、ここで「猛暑で旅行者が減った」と結論づけるのは早すぎます。

JTBが旅行動向の背景として強く挙げているのは、物価高のなかでの節約志向です。

宿泊料金も食事代も交通費も上がっています。「今年は旅行を2回から1回にする」「泊数を減らして、その代わり食事にはお金をかける」といったメリハリ消費が起きています。

つまり、2026年夏の旅行者減少には、少なくとも暑さと物価高の両方が絡んでいます。

では、みんな夏旅行を「秋」にずらしているのか

ここからが本題です。

夏が暑すぎるなら、旅行を9月や10月へ移せばいい。

実際にその兆候らしき数字があります。

HISが2026年6月23日時点の予約状況を調べたところ、国内旅行の予約者数は夏休み期間で前年比95.8%でした。

ところが、シルバーウィーク期間だけを見ると、前年比136.6%まで跳ね上がっています。

数字だけを見ると、「夏旅行から秋旅行への大移動」が始まったようにも見えます。

しかし、ここには巨大なカラクリがあります。

2026年は11年ぶりの大型シルバーウィーク

2026年は9月後半の日並びがよく、9月19日から23日にかけて5連休を作りやすい年です。

前年は同じ条件の大型シルバーウィークではありません。

つまり、136.6%という大きな伸びのすべてを「猛暑を避けて秋へ移った」と説明することはできません。

HIS自身も、猛暑や混雑が予想される夏休み期間を避け、シルバーウィークへ旅行計画をスライドさせる動きが一定数あるとする一方、5連休そのものの効果もあります。

夏休みとシルバーウィークを合計した国内旅行予約者数は前年比98.3%です。

この数字のほうが実態をよく表しています。

夏の需要が全部消えたわけではなく、その一部が前後へ分散している。

現段階では、そう考えるのが妥当でしょう。

ただし「暑さから逃げたい」という気持ちはかなり強い

旅行時期の全面的な秋移行は確認できませんでした。

では、「猛暑は旅行者の行動にそれほど影響していない」のかというと、こちらも違います。

Booking.comが2026年に実施した調査では、日本の旅行者の48%が「訪問予定の時期に目的地が暑くなりすぎていたため、旅行を断念した」と回答しています。

ほぼ2人に1人です。

さらに、旅行予約時に異常気象をストレスに感じる日本人旅行者は62%。予測しにくい天候によって旅行時期を決めづらくなっていると感じる人も55%いました。

行動にも変化が出ています。

同じ調査では、日本人旅行者の49%がオフシーズン旅行を計画し、15%がより涼しい目的地を訪れる予定だと回答しました。

つまり、猛暑への対応は「秋にするか、夏にするか」という二択ではありません。

旅行そのものをやめる人もいれば、時期を変える人もいる。行き先を変える人もいれば、同じ土地へ行って昼間だけホテルや屋内施設で過ごす人もいる。

日本の旅行需要は、暑さによって四方八方へ枝分かれし始めていると考えたほうが実態に近そうです。

実は「秋へ逃げる」より「北へ・高原へ逃げる」が強い

今回調べていて特に興味深かったのが、旅行時期よりも旅行先の変化です。

Agodaは、日本人旅行者による2026年夏後半の宿泊検索データを分析しています。

その結果、比較的涼しい場所の検索が大幅に伸びていました。

  • 蓼科高原:277%増
  • 富良野:229%増
  • 湯沢:202%増
  • 軽井沢:161%増
  • 松本・上高地:133%増

ここでいう増加率は前年同月との単純比較ではなく、2026年1~3月に検索された4~6月チェックイン分と、4~6月に検索された7~9月チェックイン分を比較したものです。そのため「前年より277%増えた」と読むのは正確ではありません。

それでも、暑い季節が近づくにつれて、高原や北海道などへの検索関心が大きく高まったことは確認できます。

最近では、暑さを避けて涼しい地域へ旅行するスタイルを「クールケーション(Coolcation)」と呼ぶこともあります。

言葉自体には旅行業界のマーケティング色もありますが、検索データを見るかぎり、行動の中身まで架空というわけではありません。

これまでの夏旅行は「海」「プール」「南国リゾート」という方向にも強く引っ張られていました。

そこへ今、もう一つの軸として、

「夏だからこそ、涼しい場所へ行く」

という選び方が強くなっています。

「夏から秋へ」よりも、「暑い都市から北海道・高原へ」。現時点のデータでは、こちらの変化のほうが目に見えやすいのです。

「だったら9月に行こう」はちょっと待った。9月も暑い

ここで厄介な問題があります。

日本では9月になると、カレンダー上は秋です。

しかし、気温まで9月1日に秋へ切り替わってくれるわけではありません。

Researchで平年値を整理すると、東京の9月の平均最高気温はおよそ26℃、大阪や名古屋、福岡では28℃前後になります。

しかもこれは月全体の平均です。

9月上旬には30℃を超える日もあり、湿度が高ければ体感はかなり暑くなります。

「真夏の35℃よりはマシ」という意味では9月旅行にも価値がありますが、涼しさを目的に9月上旬の東京や京都へ行くと、思っていた秋と違う可能性があります。

地域暑さが和らぎやすい目安注意点
札幌9月から10月は朝晩がかなり冷えることも
東京9月下旬~10月9月上旬は残暑に注意
名古屋10月以降9月はまだ暑さが残りやすい
京都・大阪10月以降盆地の京都は特に残暑に注意
福岡10月以降9月は最高気温が高め

暑さだけを避けたいなら、関東から西日本では10月に入ってからのほうが安心です。

さらに「秋らしい涼しさ」まで求めるなら、10月中旬あたりが一つの目安になります。

秋にずらせば旅行代も安い?これも単純ではない

夏休み、お盆、年末年始、ゴールデンウィーク。

旅行価格は、多くの人が一斉に休める時期ほど上がりやすくなります。

そのため、お盆のピークを外して9月の平日に旅行すれば、宿泊費や交通費を抑えられるケースは珍しくありません。

旅行会社や予約サイトが秋旅キャンペーンを展開することもあり、日程を自由に動かせる人には魅力があります。

ただし2026年は、シルバーウィークがあります。

9月19~23日前後は旅行需要が集中しやすく、「秋だから安い」とは限りません。

さらに10月末から11月になると、今度は紅葉シーズンが始まります。

京都、日光、箱根といった人気観光地では、紅葉のピークと週末が重なると宿泊料金が上がり、交通機関や観光地も混雑します。

つまり猛暑を避ける旅行で狙いやすいのは、真夏のピークでもなく、大型連休でもなく、紅葉のピークでもない時期。

2026年なら、暑さと料金の両方を考える場合、シルバーウィークを避けた9月後半の平日や、紅葉本番前の10月前半~中旬などが候補になります。

そもそも「秋に行けばいい」が通用しない家庭もある

ここまで読むと、「それなら10月に旅行すればいい」と思うかもしれません。

でも、小中学生のいる家庭ではそう簡単ではありません。

夏休みが終われば学校が始まります。

平日の10月に大人だけ有給休暇を取れても、子どもまで自由に学校を休ませられる家庭は限られます。

つまり、猛暑を避けて秋へ旅行時期をずらしやすいのは、すべての日本人ではありません。

子どものいない夫婦、独身者、シニア、大学生、休暇時期を比較的自由に決められる会社員や働き方をしている人ほど、夏のピークを避けやすくなります。

逆に、小中高校生のいる家庭では、暑くても夏休みに旅行する必要があります。

時期を動かせる大人は秋へ。動かせない家族は、夏のまま旅行方法を変える。

そんな形です。

夏旅行はなくならない。でも「夏旅行の中身」は変わる

では、猛暑が続けば夏休み旅行そのものがなくなるのでしょうか。

おそらく、そこまでは進みません。

海水浴、プール、花火大会、夏祭り、キャンプ、野外フェス、テーマパークの夏イベント、そしてお盆の帰省。

夏でなければ成立しにくい旅行やイベントは大量にあります。

特に子どものいる家庭にとって、学校の長期休暇は依然として大きな旅行チャンスです。

だから変わるのは「夏旅行をするか、しないか」ではなく、夏旅行をどう設計するかでしょう。

実際、JTBの2026年夏休み旅行動向でも、暑さを避けて屋内で涼しく過ごすスタイルへの関心が確認されています。

朝早く観光する。気温が高い昼間は美術館や水族館、商業施設へ入る。夕方から街を歩く。北海道や高原を目的地にする。あるいは、旅行そのものを9月や10月へ動かす。

猛暑によって旅行が一方向へ消えているのではなく、「時期」「場所」「時間帯」の3方向へ分散していると考えると、2026年の動きが見えやすくなります。

「夏休みだから8月に旅行する」が当たり前ではなくなるかもしれない

猛暑によって「夏休みだから8月に旅行する」という常識が変わり始めていることを解説したイメージ画像

今回のデータだけで、「日本人の夏旅行が秋旅行へ移行した」と断定することはできません。

2026年の夏休み旅行者数が減っている大きな理由には物価高がありますし、9月旅行が伸びている背景には大型シルバーウィークがあります。

それでも、暑さが旅行行動に影響していることまで否定するのは無理があります。

Booking.comの調査では、暑さによって旅行を断念した経験のある日本人旅行者が48%。49%がオフシーズン旅行を計画し、15%がより涼しい場所へ行こうとしています。

Agodaの検索データでも、蓼科高原や富良野、湯沢、軽井沢、松本・上高地といった避暑地への関心が大きく伸びました。

つまり、これから起きそうなのは「夏旅行の消滅」ではありません。

夏休みだから、とりあえず7月か8月に旅行する。

そんな長年の常識が、少しずつ崩れていくことです。

夏でも北海道や高原なら行く。都市観光なら10月まで待つ。子どもの学校があるから夏しか無理なら、朝と夜を中心に遊ぶ。

旅行者それぞれが、自分の都合と暑さを天秤にかけて旅行シーズンを組み直す。

カレンダーには今も7月、8月、9月、10月と書かれています。

でも、猛暑時代の日本では、暦の上の「夏休み」と、旅行に向いている季節が同じとは限らなくなってきたのかもしれません。


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